2年前のメルマガ第3回
ドイツの医学部における臨床実習【2018年1月16日発行 Vol.30】
欧州日本人医師会青年部から、こんにちは!ドイツの大学病院で麻酔科医をしているKimikoです。今回はドイツの医学教育で大きなウェイトを占める臨床実習についてご紹介したいと思います。
ドイツの医学部では6年間を通して3種類の実習が必須となります。 まず、基礎医学科目を修める初めの2年間では、合計90日間の看護実習を行わなくてはなりません。食事や排泄などの介助、バイタルサインの測定、配膳、(看護師の監督下で)点滴の処置や薬剤の投与など、患者さんとの接し方や病棟の仕事を初めて体で感じながら学ぶ、大事な実習です。
基礎医学課程を修了し第1次国家試験に合格すると、3年間の臨床医学の課程が始まりますが、この間には30日間の臨床実習を4期行わなくてはなりません。実習内容は採血、点滴などの基本的手技の習得と、問診・全身の診察、診断やカルテの内容の理解、添書の作成、とかなり実践的になります。
臨床医学課程が修了し、第2次医師国家試験に合格すると、PJ(Practice Year)と呼ばれる実習漬けの1年間が待っています。医師になるための総仕上げの実習ですので、1人で予診を行ってあらかじめ診断をつけたり、薬剤の静脈内投与、手術の第2第3助手、簡単な傷の処置と、ほぼインターンのような内容となります。
ちなみに、6年目のPJ以外の実習は学期の間の休暇中に行わなくてはなりません。学期の間には2、3ヶ月の休暇があるのですが、その大部分はこのような実習や博士号取得のための研究に費やされて、ゆっくりとできるのは数週間ほどだけというのが実情です。
また、実習先は基本的に全て自分で手配しなくてはなりません。休暇や研究の予定を考えながら、半年から1年前には希望の病院や科にコンタクトを取って書類をやりとりしたり、遠方であれば滞在の手配をしたりと、かなりのマネージメント能力が必要となります。ただ、実習内容の規定を満たせば世界中どこで実習をしてもいいので、旅行がてら海外を飛び回る学生もいて、うらやましいなあと思う事もしばしばです。
ドイツでは、実習の最終日にお礼の気持ちとしてケーキやお菓子を持って行くのが習わしとなっています。買った物も時々ありますが、大抵は手作りのケーキやマフィン。男子学生もお母さんやおばあちゃんのレシピで一生懸命焼いてくるんですよ。私達スタッフもこの最終日のケーキを励みに(笑)熱のこもった指導をしています。「え、君、これが初めての挿管?それは、明日ケーキを持ってこなきゃだなあ。。」なんて具合に。
ドイツ・マインツ大学病院の正門